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ポリマーアロイ・複合材  −プラスチック高性能化の代表−
 プラスチックの高性能化の手法として、二種類以上の樹脂の混合や樹脂とガラス繊維(GF)などの無機物との複合化などが多く行われています。これらは、広い意味ではいずれも複合化と言えますが、ここでは、特に前者をポリマーアロイ、後者を複合材と呼ぶことにします。プラスチックは、一般的に、これら複合化によって性能が向上しますので、樹脂メーカー各社は、複合化により多くの特徴あるグレードを開発、上市しています。多くの複合化の開発例が報告されていますが、ここでは、ポリマーアロイの典型例と特に高性能化された複合材の例としてのガラス繊維強化ポリプロピレンをご紹介します。

 ポリマーアロイ

 アクリロニトリル/ブタジェン/スチレン共重合樹脂(ABS)や、ポリプロピレン(PP)の衝撃強度向上のために開発されたブロックPPなどの他成分が混合している樹脂は、広い意味でのポリマーアロイだと考えられます。これらは、いずれも樹脂の製造時、即ち重合反応時に異種モノマーを加え共重合させ、ブロック共重合体やランダム共重合体を作り、そこにはある程度夫々のホモポリマーも存在するというやや複雑な組成のポリマーアロイとなっていると考えられています。
  一方、別途二種類以上のポリマーを混ぜ合わせてポリマーアロイにすることは、プラスチックの高性能化のためによく取られる手法で、現に極めて多種類のポリマーアロイが各社から上市されています。その中で代表的なものとして、ポリスチレン(PS)にポリブタジェンゴムなどを配合した高耐衝撃ポリスチレン(HIPS)やポリフェニレンエーテル(PPE)とPS等を混ぜ合わせた変性PPEはポリマーアロイの典型例とされていて、それらのみで夫々一つのプラスチックの呼称ともなっています。
  HIPSは、PSにポリブタジェンなどのゴムを加えポリマーアロイとしたものですが、剛性が高く寸法精度などに優れているPSの衝撃強度を高めるために開発されたものです。HIPSの開発のおかげで、PSはバランスのとれたプラスチックとして、非常に広範囲の用途に使われるようになりました。PSジャパン(株)では、HIPSに更に様々な性能を付加した種々の高性能のHIPSをPSJ−ポリスチレンとして上市しています。例えば、高光沢性のあるもの、透明なもの、難燃性や耐光性の高いもの、耐薬品性の良好なグレード、帯電防止性能のあるものなどがその例です。その結果、カップその他の食品包装や容器から、電気・電子機器部品、OA機器のハウジングその他外装品、等々非常に幅広い用途範囲をカバーする製品ラインアップとなっています。
 PPEそのものは耐熱性が極めて高いのですが、反面、非常に溶融しにくく加工が困難なため、加工性を上げるためにPPEにPS系のプラスチックが混合されますが、このPPEとPS系のプラスチックから成るポリマーアロイが一般的な変性PPEと呼ばれています。最近、PS系以外のプラスチック、例えばナイロン(Ny)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、PPなどもPPEとポリマーアロイにしたものが開発され、それらも同じく変性PPE群の中に入れられていてその性能の多様化と用途範囲の広がりを見せています。三菱エンジニアリングプラスチックス(株)では、変性PPEを、ユピエース及びレマロイの商品名で上市していますが、これらは広い範囲で剛性、耐衝撃性、耐疲労性などが安定しており、吸水率が低く電気絶縁性にも優れ、難燃性にも優れていて、非結晶性なので成形収縮が少なく、寸法精度も良いなど多くの特長を持っています。PPEに加えるPS系のプラスチックとしてはHIPSを用いていますが、これらは任意の比率で非常に良く相溶するのでその混合割合だけでも広範囲の性能が発現できるという特徴があり、多くの実用例があります。更に、ユピエースレマロイには、前記のようなPS系以外のプラスチックとのポリマーアロイもあり、それらは上記のような特長に加えて、耐薬品性、耐油性などに優れ、特に耐熱性が高いという性能も備えています。そのため、ユピエース」「レマロイの用途範囲が広く、例えば、ファクシミリやコピー機などOA機器のシャーシ及び各種トレイ類、CRT装備のテレビの高圧部部品、IC製造用トレイ、自動車分野ではヒューズ・リレーボックスやインスツルメントパネル、そしてエアスポイラー、フェンダーなど自動車の外板、また最近人気のあるハイブリッド車の電池ケースなどのそれぞれの用途に使用されております。

 複合材

  プラスチックとGFなどの無機物との複合化したものを特にここでは複合材と称していますが、複合材で最も一般的な物は、ガラス繊維強化(GF強化)のプラスチックです。多くのプラスチックにおいて、GFとの複合化が行われており、プラスチックの剛性や強度、耐熱性などの向上に最もよく取られる手法になっており、GF強化PPとかGF強化Nyとかの名称で呼ばれています。そして、通常それら複合材ペレット中で、GFは数μの径で0.5mm前後の長さになっていますが、この径と長さの比(アスペクト比)が大きければ大きいほどGF強化品の剛性や強度が高くなることが知られています。自動車分野などにおける金属材料のプラスチック代替化を考える上で必要とされるプラスチックの強度を更に高くする方法として、アスペクト比の高いGF強化複合材、即ち長繊維GF強化プラスチックの使用が注目されています。これらと比較して上記の通常のGF強化PPなどを、特に短繊維GF強化PPと呼ぶこともあります。
 日本ポリプロ(株)は、射出成形用に上市している多くの短繊維GF強化PP以外に、特に長繊維のGF強化品で非常に多くの特徴を持った高性能PPとしてファンクスターを提供しています。これは、同社の独自技術により開発された製法で作られ、そのペレットは通常のプラスチックと同じ形状をしていますが、その中のGFの長さがほぼペレットの長さと同じ、即ち数mm〜10mm程度になっていてアスペクト比が通常のGF強化品ペレット中のGFの10〜20倍になっていると同時にGF同士が互いに絡み合っている特徴があります。その結果、通常のGF強化PPと比べて、引っ張り強度や曲げ強度、衝撃強度などが飛躍的に向上し、剛性も高くクリープ特性にも優れたものになっています。また、ファンクスターは、加熱変形も少なく、線膨張係数も低く、低収縮率で成形異方性も低いなど数々の特徴を有しており、流動性も良好で通常のPPやGF強化PPと同じ方法で成形加工ができます。このため、これまで強度不足でプラスチック化困難であった自動車部品その他にも種々実用化されていて、代表例として自動車のデッキボード、サイドステップ、シフトレバーなどに用いられており、そしてドアモジュール、ダッシュボードモジュール、フロントエンドモジュール等々モジュール類のプレート用としての使用は、自動車の軽量化に大きく寄与しています。
 このように、ファンクスターは高強度PPの代表ともいえ、最も高性能なプラスチック複合材の典型とも言うことができます。